花の様式と謳われたヨーロッパ19世紀末の芸術ーアールヌーボー
エミール・ガレ(1846-1904)は、この時代を代表するガラス工芸作家として位置づけられています。昆虫や樹木といった自然をモチーフにしたデザインは今日にも受け継がれていますが、彼の開発した技術は時の流れの中で徐々に失われていきました。しかし、ルーマニアのBuzau地方だけはまだその伝統が生きているガラス工房が存在しており、ガレタイプのガラス、いわゆる優れたレプリカ品を生み出しています。
ガレ・ガラスはベネチアン・ガラスの伝統的なガラス製法に非常によく似ています。
まずはガラスブロー技術者により、窯で千度以上に溶かした透明の液状ガラスを、吹き竿を使って成形していきます。
そして熱の冷めぬ間に、別の窯に溶かしている色ガラスを上乗せし、またブローによる成形がなされます。
この色ガラスを乗せる工程を何度も繰り返して複雑な模様を作り出します。
3~4色のガラス生地を重ね、耐酸性のワックスなどで文様となる部分をマスキングしたうえでフッ化水素と硫酸の混合液につけ、表面のガラス層を腐食させる作業を繰り返します。文様を掘り出していくこの手法は「カメオ彫り」と呼ばれます。
この「酸でガラスを腐食させる」手法は、非常に手間と時間のかかる製法ですが、これが本来のガレの手法であり、この手法でしか出せないナチュラルな仕上がりが得られます。
これらのガラスはすべて職人の手作りによるため、一つ一つのガラスは色合い・文様が微妙に異なります。この伝統技術はこれまで100年以上に渡って続いていますが、専門性と技術難度が非常に高いことから、今後の技術継承が危惧されています。